Complete text -- "第9話「すべてはこの手紙」"

07 March

第9話「すべてはこの手紙」

近藤さんに新しい家族たまちゃんが誕生します。小さな生命を愛しく感じる近藤。ありふれた、しかし確かな幸せを噛み締めるのでした。

試衛館の食客たちも、それぞれの個性を炸裂させていましたね。子供の扱いに慣れた沖田さんは壬生で子供たちとのエピソードを連想させ、思わずほのぼのしてしまいました。しかし、おつねさんにたまちゃんの子守を頼まれたおみつさんの立場がありませんでしたね(笑)。そこが、子を持つ母(おつねさん)との違いでしょうか(笑)。自分に正直な山南先生と、左之助の乱暴な(笑)あやし方にも笑ってしまいました。
そして、沖田さんと永倉さんと山南さん、それぞれの流派が入り乱れた試衛館道場の日常も見ものでした。異なる(流派)指導に振り回される可哀想な林太郎さん。各流派の長所を取り入れた、後の新選組の戦法を思わせる場面でした。
そして、貴重な大福を大事そうに一つだけ持って帰らせる周斎さん。おつねさんが大好きなんですね(笑)。
血の繋がりはないけれど、愛しいと思う者を大切にする。当たり前のことかもしれませんが、三谷さんのドラマにはささやかながらも、なんとも温かい家族愛が随所に描かれています。観ているこちらまでほのぼのしてしまいますね。

しかし、またもや?道場をこっそり抜け出して、お琴さんと逢い引きする歳三。嬉しいはずなのに(笑)周りを見渡して(誰もいないことを確かめて)手を振る姿が良かったです。しかし、所帯を持つ気はないと、束縛を嫌う歳三。昔の男女は結婚を前提にお付き合いしたとよく祖母に聞かされていましたが、歳三には全く関係ないようでした。さすが、歳さんです(汗)。お琴さんの兄にこっぴどく仕返しされても、手が出せなかったのは、自責の念があったからでしょうか。(奉公先の娘と関係を持った歳三が)京都に至っては遊び方がスマートだったという副長も、こんな青い時代があったのかな、と思わせるエピソードでした。

しかし、天然理心流の道場主に思わぬ事態が待っていました。講武所の任を解かれてしまった近藤。輝かしい未来を閉ざされてしまった近藤のもとに、坂本が現れます。土佐勤王党も土佐藩もやめたという坂本龍馬(笑)。今まさに人生のどん底にあった近藤にとって、坂本は理解しがたい思想の持ち主でした。
ここでの近藤と坂本の描かれ方が非常に面白いです。近藤は多摩の道場主として、ささやかながらも確実な人生設計を立てている、絵に描いたような堅実派です。それに対して坂本は、確かな要職にも着かず、あっちへふらふらこっちへふらふら…(笑)。柔軟な思想を持っていればこその行動かもしれませんが、当時はまさか日本の将来を左右するほどの歴史的英雄になるとは思ってもみなかったことでしょう。この型破りな性格の違い、というか器の違いが、上手く表現されていたと思います。
新選組は、徳川幕府に忠誠を尽くすという一念が根底にありましたが、この近藤のあまりにも一本気な性質がそうさせたのか、と思わせるエピソードでした。深いです。
地球儀を持ち出して、小さな日本を指す坂本龍馬。異国の文化や思想を吸収する龍馬に対し、その地球儀の意味すらも理解できない近藤。長年、鎖国で他の国との交流を持たなかった日本人にとっては当たり前の反応でしょうね。

それにしても勝海舟と佐久間象山のコンビは異色でしたね。出迎えがないとか、一緒に纏めろと言う佐久間象山。自己中極まりありません(笑)。べらんめぇ調でせかせか動く”江戸っ子”勝先生(笑)もあまりにイメージ通りで感動してしまいました。しかも、春獄公からお金を出してもらえるかもしれないと心が大きくなっているのか、言いたい放題(笑)。いい味出してました。あの佐久間象山と対等に渡り合うところなど、さすが大物の風格です。佐久間象山が書き残した有名な「東洋道徳、西洋芸術」も実は勝先生の言葉だった?(どうかは分かりませんが…笑)この下りも名言に貪欲な記録魔・象山先生らしいエピソードでした(笑)。
そして、名前を覚えられてないどころか顔も覚えられていなかった近藤さん。それどころか、またもや鬼瓦と呼ばれてしまう(汗)。この先、近藤さんは象山先生に名前を覚えてもらえることはできるのか?!恐らく、近藤は象山に名前を覚えられることはないでしょう。思い出のコルクを価値のないものと言われ、佐久間象山に投げられる場面を見ても、近藤さんと象山は(物語では出会っていますが)接点がないのです。
ここで、また坂本龍馬との比較をしてしまったのですが、ここからは個人的な意見となりますので、さらりと読み流して戴ければ幸いです。
象山と勝、そして坂本は、この時点で幕府から全世界における日本国を意識している、近藤とはかけ離れた思想を持っているわけです。この違いに優越を付ける気は毛頭ありませんが、以前出てきた「井の中の蛙〜」という言葉の重要性を今思い知らされました。
多くの偉人が成し遂げてきた歴史の上に今の日本が成り立っていることを、私たちは知っています。
しかし、それでも私たちが「新選組」という小さく時代錯誤的な集団に惹かれるのは(手段はどうであれ)彼等の曇りのない真っ直ぐな忠誠心にあったのではないでしょうか。
皆さんもご存じの通り、近藤たち新選組は坂本や勝などといった進んだ思想とは全く反対の道を歩みます。時代に逆行していると気付いても、敢えてそれをしなかった。その彼等なりの思想が、現在でも多くのファンを魅了する要因のひとつではないかと思います。

それにしても、日本で最も進んだ考えを持つ人びとの会話。これでいいのか(笑)?!
しかし、こんな他愛もない話が日常茶飯事に繰り返されたのかもしれませんね。

最後、講武所に直談判に出掛ける近藤。能力を問われるならまだしも百姓上がりというだけで拒否をされたことが悔しくてならなかったのでした。百姓に身をやつしても、ひと度戦が始まればその身を投げ出しても将軍家に報いようとする八王子千人同心の誇りは身分という強固な壁によって脆くも崩れ去ったのでした。佐々木只三郎の身の程を弁えよという言葉。これだけは自分が努力をしても変えられない、どうにもならない現実を突き付けられます。
しかし、奈落の底に突き落とされる近藤に、山南から思いがけない手紙が届きます。
尽忠報国の志を持つ者であれば出自を問わず募集するという浪士組。講武所の任を解かれ絶望の淵に立たされた末、手にした希望の光。近藤は無我夢中で走り出すのでした。
ここでの近藤とおつねさんのやりとりは、日本における古き良き時代の夫婦を感じさせる場面でしたね。
講武所の話が流れたことをおつねに伝える近藤。先の見えない夫の不甲斐なさを責めるどころか、励まし気遣うおつねの気持ちが痛いほど伝わってきました。小さな幸せを守りたいと思うおつねさんの気持ちも、女性として当たり前なことでなんだか応援したくなってしまいました。
作り途中の”ふわふわ卵”が総てを物語っていたのではないでしょうか…。

それにしても、原田さんの「人としてこれでいいのか?」生活(笑)。結局、そのちゃらんぽらんな行動が近藤さんの転機に結びついたのですが、いやはや人生とは分からぬものですね(笑)。
とにもかくにも、いよいよ浪士組!試衛館の人々が時の人となります!

個人的に、大工仕事を手伝う?永倉さんの隠された一面が気になる管理人でした。
01:35:00 | swing | | TrackBacks
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