Complete text -- "第27話「直前、池田屋事件」"

11 July

第27話「直前、池田屋事件」

今回は、嵐の前の静けさとでもいいましょうか。池田屋への緊迫感を漂わせながら、新選組も組織としての基盤を固めているように思いました。
皆さんも書かれていましたが、特筆すべきは近藤さんです。永倉さんとのやり取りは土方さんを凌ぐほど無機質で冷徹で思わず鳥肌が立ってしまいました。それに対し平助や周平くんを温かく見守る表情も印象的でしたね(感極まった勘太郎さんの表情も本当に素晴らしかったです)。隊士の意志を汲み育てる器も備えてきている、鬼だけでない組織の長としての風格が増してきたように思います。山南さんに迷いを打ち明けている場面もありましたが、(今回の内容を振り返ってみて)きっと近藤さんはこれからも国を憂いながら時代の狭間の中で苦悩し続けていくのではないかと思いました。
今回は、「鬼」「仏」「迷い」といった、三谷さんの描く近藤像がはっきり見えた気がします。

そして、武田さんはじめ隊士それぞれの役割が確立してきましたよね。個人的には、目立たず、しかし確実に職務をこなす山崎さんに惹かれました。もともと縁の下の力持ち的な役どころが好きなのですが(汗)、桂吉弥さん演じる山崎さんは細心にして大胆という言葉がぴったりの監察でした。観柳斎とスローモーションでアイコンタクト(!)する場面にも引き込まれました。短い場面でしたが格好良い演出だったと思います。
また、桝屋でただ一人戦っていた”頑張っているのに報われない”尾関さんも忘れられません。彼の底知れぬ忠誠心を見せつけられた思いです。さすが「誠の旗」を守るために入隊した隊士です。

最後に、己の姿勢を貫こうとした影の勇者(ライバル)古高俊太郎。静かでありながら力強さを感じる中山俊さんのたたずまいが目に焼き付いて離れませんでした。見廻組の佐々木さんもそうですが、こうした新選組を引き立ててくれる敵の存在は有り難いですね。物語にも厚みが増すと思います。

個人的には、土蔵という閉鎖された空間の中、暑さで朦朧としながらてこずる土方さんと、折れる寸前の古高さんの極限状態を観てみたい気もしましたが(絶叫するところをどきどきしながら待ってしまいました…汗)、この件については賛否両論あるようですので、以下に私個人の意見を書かせて戴きたいと思います。


古高の拷問は、土方(新選組)の鬼の一面を語る上で非常に重要なエピソードだと思っています。個人的には、土方と古高の”極限状態=戦い”を観たいと思っていました。
これは「拷問の様子を忠実に再現して欲しい」という意味ではなく、このような残虐な行為に及んでしまった異常事態の緊迫感を、もう少し肌で感じたかったというのが正直な気持ちです。

もちろん間接的な表現で充分理解(想像)できるよう、いろいろな配慮がされていたと思います。お子さんや新選組に先入観のない方のことを考えると、これ以上ない賢明な演出だったと思います。

しかし、あまりに計算しつくされていて、そつがなさすぎるというか、綺麗過ぎるといった感も拭えませんでした。土蔵の扉が開いた瞬間、上昇していた鼓動と体温が一気に下がってしまったのです。
大惨事を未然に防がなければならない土方の焦りや執念、土蔵という閉鎖された異様な空間、志を貫けなかった古高の無念さ…といった熱気や挫折といった空気を肌で感じるような演出があっても良かったのではと思っています。
できれば拷問という非人道的な”違和感”を視聴者にきちんと理解してもらう重要な回だったのではと思います。

時代劇には「斬る」という行為一つにしても、銃ではなく体当たりでぶつかるからこそ表現できる「痛み」や「衝撃」というものがあります。直接描写されなくても、俳優さんの表情や状況で「刀とは痛いものなんだろうな」とか「これだけ殴られると痛いんだろうな」とか、私たちはそれを子供の頃から”頭”ではなく自然と”違和感=感覚”として感じてきたように思います。
話が少しそれますが私が子供の頃トラウマになったドラマに「あばれはっちゃく」と「積木くずし」があります。前者のドラマでは当たり前のように親が子に手をあげ、その度子供は吹っ飛ばされ床に叩き付けられます(このドラマの救いは主人公の男の子が非常にタフだということですが…)。これらは現代劇でしたが、観ていていつも「痛い!ひどい!」と思い「悪いことはしません!ごめんなさい!」と、まるで自分がお灸を据えられたように感じたものです。
残虐な場面を描写するのは私も反対です。しかし、体当たりでぶつかるお互いの痛みを、今のお子さんにもっと感じて欲しいです。そして、人を傷つける行為がどんなに恐ろしいことか身をもって感じて欲しいと思います。
最近では映画「たそがれ清兵衛」で久々に”斬る行為”に対する痛みというものを感じました。洋画のような派手なアクションはありませんが、双方だんごになって床を転がる姿など、刀が骨にぶつかるような鈍い痛みを感じ恐怖が襲いました。これは洋画にはない日本独特の描写だと感じています。
湿気を帯びた、日本独特の空気というものもありますよね。
ドラマでも、むせ返るような”夏の暑さ”、”新選組を取り巻く幕末の狂気”、”がむしゃら”さというものをもっと感じてみたいものです。

ただ、機械的でクールな土方さんを表現するには、どこまでもタイトな表現に徹した今回の演出は正解だったのかもしれません。
でも、幕末の動乱ということを考えると、ドラマと共に視聴者である自分もドキドキ、ハラハラ、時に痛みを、”頭ではなく心で感じたい”と、どうしても思ってしまうのでした。

管理人がやや否定的な書き込みをしてしまうという前代未聞の状態になってしまいましたが(汗)、皆さんの熱い書き込みを読んで今回は自分に正直に書いてみようと思いました。
不快になられた方がいらっしゃるかもしれませんが、どうかお許し下さい。
でも、言いたいことが言えてすっきりしました。ありがとうございます。
02:13:00 | swing | | TrackBacks
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